第3話 NHKのど自慢

   

「このおばあちゃん、冥土の土産枠だ。ほら、このおばあちゃん、いつお迎えが来てもおかしくない年だよ」そば屋のテレビでNHKのど自慢を見ていた妻の知美がにこにこしながら言った。「えっ、冥土の土産、枠?」と私は首を傾げながら聞き返した。

「NHKのど自慢には、いろいろな枠があるのよ」と妻は言いながら、「最初に登場する人が盛り上げ枠。歌のうまい人は歌ウマ枠なの。あっ、この人たちは仮装枠ね」そう言いながら、セーラー服姿で登場してきたおばちゃん3人組を指さした。

じゃあ、君がもしNHKのど自慢に出たら何枠と聞くと、「そんなの決まっているじゃない。女優枠よ」と、すこしムッとしながら妻は答えた。

ガラガラと音がし、玄関から客が入ってきた。妻は素早く笑顔を作り、「いらっしゃいませ、こんにちは」と元気よく客を迎えた。

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