第10話 おにぎり
「ヨウコちゃんって、いつも口に何か入っていますよ」
洗った食器を拭きながら、ミナちゃんは職場での様子を語っていた。
妻の知美が経営するそば屋では、以前から繁忙期にアルバイトを雇い入れている。妻の友達を中心にシフトを組んでいるのだが、この日は妻の友達のヨウコちゃんが勤めている会社の後輩で、同じ職場のミナちゃんに入ってもらっている。
ヨウコちゃんは、妻がPTAの関係で知り合った友達で、以前からお願いしているのだが、彼女の交友関係の広さから、友達も何人か紹介してもらっていた。
「わたしとヨウコちゃんは、ロボットの部品をつくる職場なんですけど、製造ラインではないので、結構自由なんです。上司も職場内にいるんですけど、常に見張られてはいないので、ヨウコちゃんはちょくちょく、チョコレートやあめ玉を口に入れて仕事をしています」と続けた。
妻が「え~、そんなに自由なの?」と聞くと、ミナちゃんは、「あからさまにお菓子をボリボリ食べている訳でもないですから、上司も見て見ぬふり、をしているのかも知れません」と答え、「あ、そういえば・・・」と思い出したように、
「この前なんか、おにぎりを食べていました」と言った。
次の日、ヨウコちゃんがシフトに入っていたので、ミナちゃんの言っていた話をすると、「あ~、たまたま友達からおにぎり貰ってね、朝ごはん食べてこなかったから、お腹空いちゃって」と、いつもの様に、ニコニコしながら言った。