第7話 太くて長くて反っていて
私が暮らす地方には、7年に一度、大きな丸太を引っ張りまわす祭りがある。引っ張って行く途中で、急坂から滑り落してみたり、広い川を渡ってみたりして、最後には神社に建てるのだが、この地方に暮らす人たちはみんなこの祭りが大好きだ。
何日かに渡って行われるこの祭りは、地元のケーブルテレビで生中継され、さらに録画でも繰り返し放送されるので、祭りに参加した人は後日この録画を見て、また楽しんでいる。
妻の知美もこの祭りが好きなのだが、そば屋の営業があるので直接参加することができない。だからいつもテレビで祭りの雰囲気を楽しむ。特に坂を滑り落すところとか、川を渡るところは面白いと言って、その場面が流れる度に喜んでいる。
今日もそば屋でテレビ放送を見ていた妻が、「ねー、シューちゃん、凄いよこれ」と、やや興奮気味にしゃべっている。何が凄いのかと私もつられてテレビに目をやると、妻は目を大きく見開き、声のボリュームも上げながら、
「太くて、長くて、反ってるー」と言った。
ガラガラッと音がし、玄関から客が入ってきた。妻は何事もなかったかのように、「いらっしゃいませ、こんにちは」と、元気よく笑顔でいつもの様に客を迎えた。
テレビの画面には、丸太がアップで映っていた。