第9話 元気

   

5月に入り、丸太を引っ張りまわす祭りの続きが始まった。4月上旬から中旬にかけて山から里へ下した丸太を、5月上旬から中旬にかけて、神社へ曳きつけ建てるのだ。

子どもから年寄りまで参加するこの祭りは、とにかく人の数が凄い。何処かから湧いて出てきたのではないかと思えるほどに、道路は人で埋め尽くされる。

妻はそば屋の営業があり、私もその手伝いをしなければいけないので、祭りには参加せず、この日も早朝から店の準備をしていた。

私は店内の掃除をしながら、窓の外の道路を見ると、見たことのある車が走ってきた。親父の車だ。車内を見ると、祭りの法被姿の親父とお袋が乗っている。

これから丸太を引っ張りに行くんだな、と車を見送りながら、店の奥にいる妻の知美に「親父とお袋、これから祭りに行くみたいで、いま自分の車で通り過ぎて行ったよ」と教えてあげた。

すると彼女は、「え~~~、嘘でしょう」と驚いたような声を上げながら、奥から出てくると、さらに呆れたといった表情で、

「昨日の夜、お義母さん、友達と電話で『行かない行かない。足も痛いし疲れるから、お祭りには行かないわよ。お祭りはテレビで観ているわ』って喋っていたのよぉー」と言いながら、車の走り去った方向を見つめた。

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